教会の鐘の音から生まれたデザイン。アートポスター制作と思考のプロセス。

先日、アムステルダムにあるプリント特化のアートスタジオ「AGA LAB」へ行き、オリジナルの新作ポスターを制作してきました。
前回のワークショップで学んだ基礎を活かし、今回は私自身のデザインを1枚の紙に落とし込むプロセス。その思考の裏側をお届けします。

インスピレーションを、ミニマルな形へ

ここ最近、私は「デザインの表現をどこまでシンプルに、ミニマルに削ぎ落とせるか」ということを考えています。と同時に、普遍的な形状である「丸(サークル)」が持つ、角のない柔らかさや軽やかさには、強く惹かれるものがあります。

今回のデザインは、以前オランダにある聖ジャンス教会(Sint-Janskerk)を訪れた際に、ツアーで鐘の真裏まで入ったときの体験から生まれています。そこで目にしたのは、いくつもの歯車と連動した「線」の美しさでした。張り巡らされた線が複雑に噛み合い、大きな鐘を鳴らし、やがて街全体に時刻という「一つの音を届けるプロセス」がとても素敵だったのです。
複雑な仕組みが、最後は「時間を伝える」という役割へとバトンを渡される。この空間にあるストーリーからインスピレーションを得て、今回のポスターをデザインしました。

デジタル×五感で選ぶ素材

シルクスクリーンの面白さは、デジタルデータの「設計」と、アナログな「素材選び」の融合にあると思っています。
スタジオへ向かう前、まずはPCでデータ作りから始まります。
シルクスクリーンは1色ごとに版を分ける必要があるため、仕上がりの色の重なりを想像しながら、レイヤーを設計していきます。
この時、データ自体はすべて「黒1色」で作成するのですが、モノクロのデータも、それ自体がひとつのデザインのようで新鮮な発見でした。

インクと紙選び

【インクの選択】
たくさんの色の中から、落ち着きと深みがありながらも美しい発色がある「紺色系の青」と、光の角度によって表情を変える光沢のある「シルバー」の2色にしました。

【紙の選択】
アムステルダムの画材屋さんを何軒も巡り、インクのノリや、ポスターとしての厚みを確かめ、オランダ語の用紙名に戸惑いつつも、最終的には自分の指先の「手触り」を信じて、ホワイト、生成り、グレー、紺色の4種類をピックアップ。どれも強度があり、インクをしっかりと受け止めてくれる紙質です。

手作業が生み出す「表現」

いざスタジオへ。巨大な機械を使ってデータを版へと転写し、水洗いする。
実はシルクスクリーンは、刷る前後の「洗う工程」が驚くほど多く、体力も必要な作業です。
今回は2色刷りのため、位置合わせをして作業を2回繰り返します。インクが版の上で乾かないよう、スピーディーにスキージ(インクを押し出す道具)を引きます。全身の体重をかけるため、終わる頃にはヘトヘトになりました。

しかし、デジタルでは決して計算できない、かすかなインクの「かすれ」や「にじみ」が生まれ、その表情が作品に温かみを吹き込んでくれました。

ひとつのコンセプトが、異なるメディアで花開く

完成したポスターは現在オランダで大切に保管していますが、この「丸と線」のデザインをベースに、配色を変えてタオルやハンカチ、スマホケースといったプロダクトへ展開しました。
同じデザインであっても、乗せる素材が変わるだけで、全く異なる表情や手触りが生まれます。

ひとつのコンセプト(軸)があれば、メディアの枠を超えて多様に形を変え、それぞれの日常に溶け込んでいく。そんな「デザインが持つ展開力の面白さ」を、私自身も改めて実感する有意義なクリエイティブの機会となりました。

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