28 3月 「豊かな自然」と「土と根」をテーマに本質を視覚化する撮影アートディレクション

自然の力を生かし、あらゆる生きものと共存する「生態適合農業」から届く、ワインや発酵食品、穀物を生産・販売されている株式会社いにしえ様。
現在、販促デザイン一式を担当させていただいています。本質的な核となる部分を汲み取るために、丁寧にヒアリングを重ねてまいりました。
今回のプロジェクトは商品写真撮影です。その中で私が最も大切にしたのは、どう視覚化するかというプロセスでした。
「生態適合農業」を、どう伝えるか。
いにしえ様が商品を届ける理由は、「美味しいから」だけではありません。
農薬や肥料に頼らず、雑草を敵とせず、すべての植物がバランスを取り合う畑の環境を伝え広めること、そしてその中で育まれた素材のポテンシャルを最大限に引き出すこと。
その風景を写真を通して伝えることが、商品を手に取る方への大切なタッチポイントとなり、ブランドのメッセージになると考えました。


フォトグラファーさんとのディスカッション
今回は長崎県のUKAWAPHOTO様にお願いしました。
撮影にあたり、まずはこのコンセプトを深く共有することから開始。
「無添加」や「健康」といったことだけでなく、なぜ今、日本の食文化の継承が必要なのか、なぜ「雑草」という概念を捨て、自然の循環に身を委ねるのかを共有しました。
担当してくださった方は、日頃から食と健康の関係に深い関心を持たれており、コンセプトに強く共感してくださいました。
その対話の中から、撮影の方針を資料にまとめていただき、ディスカッションを重ねました。
ここでまとまった2つの視覚的テーマ。
テーマ1:【豊かな自然】調和の再現
いにしえ様の自社農園のぶどう畑は、木陰が心地よく、草花が生い茂り、時にはカモシカも訪れる場所。
その調和をスタジオで再現するために、フォトグラファーさんは実際に畑に生えている植物を一から集めて用意してくださいました。



一つひとつ丁寧に、命を吹き込むようにデコレーションされた空間。
クライアント様からも「どんな媒体に載せてもブランドの世界観がしっくりくる」と、心からお喜びの声をいただきました。


テーマ2:【土と根の知恵】見えない根幹への敬意
もう一つのテーマは、職人の手仕事や、醸造・熟成の時間を象徴する「土と根」です。
一昔前の農業に学ぶ根幹的な知恵。そして、目に見えないところで深まる熟成のプロセス。

力強さと知恵を表現してくれる流木をご用意いただきました。
背景色と土の色、そして美しい曲線の枝木が調和する絶妙なダーク色は、「語らない美しさ」と「生命の循環」が凝縮されました。

編集後記:世界の広さ
日本にいた頃、私にとってオーガニックは「自分の健康や美容のため」というイメージが強いものでした。 しかし、イギリスや今のオランダでの生活を通し、その視点は大きく変わりました。
こちらでは、環境を守るため、動物たちの居場所を守るために選択をする人が圧倒的に多く、ロンドンのレストランでは当たり前のようにヴィーガン料理が並び、互いの選択を尊重し合う雰囲気でした。
この体験が、いにしえ様のプロジェクトを進める上での私の大きな指針となりました。
デザインを通じて、いにしえ様紡ぎ出す物語を、多くの方に届ける架け橋になれたら。
そんな想いです。








